こんにちは!ディオニーマガジン編集部です。
今回は、2024年7月にスペインのワイナリー「Escoda Sanahuja(エスコーダ・サナフヤ)」を訪問した、東日本営業チームの大久保のレポートをお届けします。
当主のジョアン・ラモン・エスコーダは、スペインにおけるナチュラルワインのパイオニアのひとり。妻のマリーカルメ・サナフヤと共に1999年にカタルーニャの南に位置するコンカ・デ・バルベラのプラナフェタの土地にワイナリーを設立し、2003年から本格的にワイン造りをスタートしました。オーガニック、ビオディナミ栽培を実践し、2005年からは酸化防止剤も使用していません。現在、11haの畑を所有し世界的に有名なスペインのワイン生産者となっています。
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バルセロナ市街地から3~40分ほどで、建物がまばらになり、なだらかな山道をひたすら登る。1時間ほどで周りがブドウ畑だけに。エスコーダの醸造所兼レストランの周りはブドウ畑しかない、なかなかの秘境。こんなロケーションで試飲出来るのはとても幸運だと思った。
醸造所の目の前にブドウ畑があり、すぐ管理できるようになっている。
併設のレストランの入り口から入り、奥の扉を開けると、とても広い空間があった。まず目に入ったのは、2.5mほどある巨大ティナハ(甕)、そして僕の背より高いくらいのティナハと、その後ろに茶色に塗装された大小のステンレスタンクがいくつもある。とても掃除が行き届いている印象。
その場でタンクサンプルを試飲したが、まさかの吐器(※とき)がなく、排水溝に直接吐き出すスタイル(試飲はできるだけ飲み込まない)。半ズボンの僕はその吐き出したワインが飛び散り足に結構かかった。
地下に降りるともっと広い地下セラーがあった。案内してくれたとき、ジョアン・ラモンはとても自慢げだった。それもそのはず、地下10メートルもあり、温度帯も湿度も適切で、熟成にはとても理想的な空間。そして管理が行き届いており、ジョアン・ラモンはとてもきれい好きという印象を受けた。今回の出張で一番素晴らしい地下セラーだった。
試飲にはラウレアーノ(Mendall(メンダール)の当主)も同席。最初の20分ぐらいは、ジョアン・ラモンとラウレアーノがずっと会話していた。二人だけの世界に入りながらも時々こちらにも話し掛けてくれる。笑
試飲は屋根のあるテラス席で行い、そこではロックが爆音で流れていた。ジョアン・ラモンは音楽に合わせてとてもノリノリで、サビに入ると今にも立ち上がって、ワインの瓶をマイク代わりに歌いだすのではないかというぐらいのテンションだった。
試飲後、併設のレストランでフライドポテトと鶏肉のクリーム煮、パンをご馳走になった。そのクリーム煮の味がやや濃かったが、フライドポテトの塩気が優しくて、うまくバランスが取れていた。そのお料理にはピノノワールのLa Llopetera (ラ・ヨぺテラ)が一番合った。彼のピノノワールはスペインワインとは思えない色っぽさがある。濃厚なブルーベリー、またはブラックベリーの熟度が高い果実感に、ブルゴーニュとは異なるフィネスがミドルから伸びてきて他のキュヴェとは一線を画している印象がある。それもそのはず、ピノノワールだけ車で3~40分走った山の中腹の斜面にあり、発酵時も温度コントロールに気を遣い、熟成期間もほかのキュヴェより1年長い。ジョアン・ラモンに愛されたピノノワールと、濃厚なクリーム煮にはもってこいな組み合わせだった。
この訪問を通して、ジョアン・ラモンは明石家さんまさんみたいな人だなと思った。表情が数秒おきに変わるし、ずっと喋っているし、ワインの話をしているのかも分からないぐらい展開がスピーディ。しかも、英語とスペイン語とカタラン語(カタルーニャの方言)を巧みに使いこなし、通訳さんもついていけてない顔をしていた。
でも、彼はとても気を遣ってくれて、ワインをテイスティングするたびに、僕らにどうだ?と質問してきた。少し自慢げだった。それもそのはず、この時までに訪問してきた生産者の中で、一番エネルギーを感じ、彼自身をそのままワインに詰めたようなバリエーションのある旨味、奥行き、パワー、どれも素晴らしいワインだった。
ジョアン・ラモンの言葉の中で強く印象に残ったのは、「私こそ、認証だ。」という言葉。「ナチュラルワインが流行ることはいいことだが、品種や生産者の個性、そしてその土地に昔からある伝統的な造り方など、そのワインの本質的部分が今は失われつつある」と話していた。
自身がワインを造っている意味、この場所でやっている意味などがとても大事で、それを1本のワインで表現すること、それが彼のいう「私こそ、認証だ。」なのだろう。